EPISODESOH 20th Anniversary

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EPISODESOH 20th Anniversary

EPISODE.14

熱くなることの楽しさが
人を、人生を、変えていく

早稲田大学“踊り侍”
20代目副幹事長
佐藤晴香

毎年100人以上のメンバーがにいがた総おどり祭に参加し、若さとパワーあふれる演舞で各地の会場を大いに沸かせる学生よさこいサークル早稲田大学“踊り侍”。20代目の副幹事長佐藤晴香さんは、踊りに全力を注ぐことで得られる“何か”、県外から見たにいがた総おどり祭、パンデミックが活動に与えた影響を、多感な学生時代だからこその視点でどのように捉えているのでしょうか?
20年と少し前までは、にいがた総おどりも踊り侍も存在しなかった。愛とパッションが生き方を、文化を作る、最前線のインタビューです。

全力を注ぐことで、人は変わる。踊り一途な大学生活。

佐藤さんが副幹事長を務めている学生よさこいサークル早稲田大学“踊り侍”は、毎年にいがた総おどりでは100人以上のメンバーで踊って、会場を盛り上げてくれますね。

佐藤少なくとも10年以上前から踊り侍はにいがた総おどりに参加しています。今年が20代目で、メンバーは160人。みんなで移動したり飲食店に入ったりすると、結構すごいことになります(笑)。
踊り侍は「何かを注げば、それ以上のものが返ってくる場所」。練習に行くたびに何かを得て、前よりももっと楽しいとか感動したとか、毎回プラスが得られるので、こんな贅沢な経験ができる場所は他にないと思います。私自身が踊り侍のファンで、憧れの中にいることが出来るのはやっぱり贅沢ですよね。

にいがた総おどり祭りも今年20周年を迎えます。“同じ年”ですね。

佐藤ご縁ですね。チームにいると実感が湧きませんが、よく考えると組織が20年続くことは、すごいことだと思います。

佐藤さんはもともと踊りの経験があったんですか?

佐藤全然です。踊り侍は8割が踊り初心者です。パフォーマンスサークルに憧れがあり、新歓の時にかっこいい衣装を着ているなと思って、踊り侍のブースに行ったんです。その時に先輩に「絶対に後悔させない」と言われ、「この人たちと大学生活を過ごしてみたい!」と思って入部しました。そうして気づいたら踊り一途みたいな大学生活に(笑)。サークル以外の友達にも自慢しちゃうくらい、そこにいる自分も、メンバーも、空間もとにかく大好きです。

「踊り侍らしさ」について教えてください。

佐藤本当に何事にも本気で熱く、負けず嫌い。踊りはもちろん、遊ぶ時でも屋台を出す時も、物事の大小に関わらず全てのことに全力を注ぐところが魅力だと思っています。
練習中は熱くなって、泣いたり感情をむき出しにしたりする場面もあります。それを全員が受け入れてくれるからより感情を出しやすくなって、自主練習や私生活にも全力を注げるようになるんです。刺激を与え合えるメンバーで、私自身も感情を出すことが恥ずかしくなくなり、色々なことに自信を持てるようになりました。そんな風に「人が変わる」ところがすごくいいところです。

拍手と歓声が鳴り止まない、にいがた総おどりの温かさが忘れられない

にいがた総おどり祭のエピソードはありますか?

佐藤「あったかいお祭りだよ」と、新潟での幸せな思い出を振り返る先輩方のお話を聞いて、行く前からずっとワクワクしていたのを覚えています(笑)。実際に鳥肌が立つ程「温かさ」をとにかく感じたお祭りでした。万代十字路で踊らさせていただいた時に、前と横、そして上からも見てくださって、演舞の途中から拍手と歓声が鳴り止まなくて…しかも終わった後もお客さんが泣きながら良かったよと言ってくださったんです。あの景色がずっと目に焼き付いています。

能登総合プロデューサー初日の夕方から夜にかけての時間帯に古町で踊る踊り侍も好きですね。

佐藤古町での私たちの演舞は、実は並び方が特殊になるんです。しかも祭りに参加しないメンバーも東京から見に来たりして、距離が近い会場なので写真を撮ったり、目の前で声をかけてくれたりして楽しいですね。
本当ににいがた総おどりへの愛が強いサークルなので、引退したOBOGも踊りに来ています。それを見て後輩が憧れて次の年に…それがずっと続いています。
新潟に来るとタレカツを食べたりしますが、数年前に大学から徒歩数分のところにタレカツ屋さんができて、すっごく美味しいんです。「新潟を味わいたい」って、みんな行っています。

パンデミックになってお祭りもイベントも無くなっていくなか、踊り侍はにいがた総おどりの総おどり楽曲「まほろば」を踊って、Youtubeにアップしてくれました。

佐藤リアルで集まることはできなかったので、個々で踊った「まほろば」の映像を編集してアップしました。また、パンデミックで対面活動ができなかった期間にzoomで連絡を取り合って自分達で総おどり楽曲を作ったんですが、そこで「まほろば」の振りを一部使わせていただきました…このことは初告白です(笑)。みんなで入れたいって言って、ちょっと新潟への愛が強すぎました(笑)。

※総おどり楽曲…お祭りやイベント、チームが制作する、複数のチームが一緒に踊ることができるように制作された楽曲

学生サークルに「また来年」はない。祭りがないなら作ればいい!

すごい(笑)!それでもパンデミックが世界中で拡大する中、例年通りの活動ができず大変だったかと思います。

佐藤踊り侍はとにかく諦めが悪いサークルで、それが1番の強みだと思っています。2020年の秋に代替わりをして、私は副幹事長になりましたが、緊急事態宣言中はほぼ活動ができず、オンラインで週2回ミーティングをしていました。
2020年は「また来年」というハッシュタグをよく見たりもしましたが、学生よさこいチームには「今年」しかありません。当時私は2年生でしたが、先輩たちの思いがある。だからずっと、たとえオンラインであっても、踊り侍は北は北海道から南は高知まで、全国各地に元気・感動・衝撃を与えるチームであるという、その使命を果たすことは絶対にしなければならないとみんな思っていました。でもお祭りはすべてなくなってしまったわけです。
そこで2020年の作品「ガルル」を10月に日産スタジアムで初お披露目して、勢いそのままに私たちもお客さんも大好きな、あのお祭りの空間を自分たちで作ろうと、11月に「シン・祭」というお祭りを開催しました。

パンデミックの中でお祭りを作ること自体、非常に難しいことですし、そもそも「踊る」ことと「祭りを作る」ことは全く違いますよね。

佐藤いろいろな人に聞きながら会場を探したり、出演してくれるチームさんに交渉したり、1から作り上げていきました。感染症対策をしながらも社会情勢的に開催できるかギリギリのところでしたが、諦めが悪いチームなので、もうひたすらがむしゃらにやって、なんとか開催することができました。
お祭りを運営してくださっている実行委員会の方々の大変さは想像を遥かに超えるもので、そこに毎年出させていただけることは、本当に当たり前のことではないなと思いましたね。

きっと副幹事長として活動することは、「踊ることを楽しむ」だけではない、大変さも伴うのではないでしょうか?

佐藤大好きなこのチームをメンバーにも好きになってもらって、みんなにとっての一番の空間になってほしい、そんなチームを作りたいと思って立候補しました。踊り侍における熱量がみんなすごいので、それを自分の熱量にして、踊り侍以外の大学生活、さらにその先においても燃焼できる人たちになってもらいたいなという思いがあります。同時にそうやって燃焼して外で得てきたものを踊り侍に還元したら、もっと素敵な大きいチームになるはず。そんな目標をもって活動しています。

「熱くなることの楽しさ」が、もっと高みへと心を駆り立てる。

大学生活を踊り侍に捧げてきた佐藤さんが感じている、踊りの力を教えてください。

佐藤たくさんあると思っていて、その中でも一番が「つながり」だと私は考えています。踊り侍は踊りで160人がつながっているチームであり、お祭りで踊りを届けることでさらにお客さんともつながれます。そのお客さんと一緒に踊って同じ幸せを味わえる総おどりが本当に楽しくて!実際、私は“人とのコミュニケーション”が踊りのモチベーションだったりします。踊り侍のメンバーはみんな人がよく、一人で踊るよりも同じ空間で仲間と一緒に踊って繋がる時間が好きです。
また、辛い時は誰かと踊ると全部発散できるんです。モヤモヤしたらとりあえず自主練部屋にいって踊り狂います(笑)。人と繋がることもできるし発散もできる、踊りの力はとんでもないものです。

今が大学3年生で、いずれ引退、卒業、社会人とステージは変わっていきます。何か踊り侍の経験が今後の糧になると思いますか?

佐藤引退した後も、侍にいた時がピークだと思いたくありません。もっといい経験をしたい、上を目指したい、特に「人に『面白い』を与えられる人になりたい」と思うようになったのは、踊り侍に所属したからだと思います。今は踊り侍一本ですが(笑)、就職活動が始まったら情熱を注ぎ続けられる場所、人に何かを与えられる仕事を探すと思います。

その熱量を持ち続けることは、大変なことのようにも思えます。

佐藤一つのことに注ぐことは絶対大変ですが、そこで見られる景色が忘れられないからこそ、もっと頑張ろう、また次も…となるし、その達成感は忘れられるものではありません。この先でも味わっていきたいですね。

引退後の話も出ましたが、次の世代、後輩たちに受け継いでいきたいと思うことはありますか?

佐藤「チーム」とは伝統を受け継ぐことを大事にするものだと思いますが、踊り侍は逆で、常に壊していくんです。「去年とは被らないものを」「歴代とは違うものを作りたい」と毎年言っていて、変わろうとし続けることがチームの特徴なんです。それが「熱さ」以外の特徴であり、結局それも熱さとイコールなんですよね。
だから逆説的ですが、この「何かに熱くなることの楽しさ」を受け継いでいってほしいなと思います。

ちなみに、OBOGの方たちのように、引退しても新潟に踊りに来てくれますか?

佐藤もちろん行きたいです!今、新潟に行きたくて仕方がないですし、私は今3年生で、1年生の時に各地で踊って以来、まだ「2回目」の経験を一回もしていません。にいがた総おどりの景色は本当にすごく覚えていて、あの時のあの景色をもう一回味わいたい。しかも今度は自分たちが1から必死で作り上げた演舞を新潟に届けに行きたいです。引退した後は次の代の演舞になりますが、それもぜひ参加したいです。新潟に何かを届けに行くことは、絶対にしたいなと思います。でも、まず今は引退後のことよりも踊り侍ファーストです!

※2021年のにいがた総おどり祭はオンライン開催となり、残念ながら踊り侍のリアルでの参加は叶いませんでしたが、当日は生中継で祭りに参加。「新潟に最高のものを届けよう」とこの日のために演舞会場を探した結果、渋谷ヒカリエを手配し、東京から新潟へ、全国へ、熱のこもった演舞を届けてくれました。

※佐藤さんは2021年11月の早稲田祭をもって早稲田大学“踊り侍”を引退されました。

PROFILE

佐藤晴香  Haruka Sato

早稲田大学“踊り侍” 20代目副幹事長
2000年生まれ、ロサンゼルス出身。早稲田大学政治経済学部3年。学生よさこいサークル早稲田大学“踊り侍”所属。2年生時に広報部所属、新歓隊長(リーダー)を務める。20代目副代表。

EPISODE MOVIE

EDITOR'S NOTE取材後記 ライター:丸山智子

首尾一貫して「踊り侍が大好き!」という想いに溢れたインタビューで、学生時代にそこまで夢中になれることとの出会いと得られる人間的成長が眩しく、この先どんな風に得たものを生かしていかれるのかが楽しみになりました。
2021年の作品『#らしさ』についてもお話を伺い、本当に新潟で披露される楽しみでした。パンデミックだったから叶わなかったことがある、でもパンデミックだったから生まれたものもある。早くまた、踊り侍の、そしてさまざまなチームの皆さんの想いや力が詰まった演舞を生で見たくてたまりません。